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Artemis Fowl アルテミスと妖精の身代金

アメリカ映画 (2020)

アイルランドの児童文学作家オーエン・コルファーの手になる世界的ベストセラー「アルテミス・ファウル」シリーズの、ディズニーによる映画化。シリーズそのものは、2001~12年にかけて8巻まで刊行され、世界累計2500万部。日本では、5巻まで翻訳出版されている〔因みに、「ハリー・ポッター」シリーズは全7巻で5億部以上/比較するものが悪かった。1冊目の『⻩⾦の羅針盤』が映画化された「ダーク・マテリアルズ」シリーズは全3巻で1750万部〕。その『⻩⾦の羅針盤』(2007)の制作費は1億8000万ドル。それに対し、その13年後のこの映画の製作費は1億2500万ドル。ケチり過ぎたため、CGの完成度は低い。Rotten Tomatoesは131の批評家でOKは僅か10%。IMDbも4.0と低迷。その理由は何なのだろうか? 1つ前に紹介した『Eleven Days(11時間)』は、あれほどひどい脚本なのにIMDbは7.0。要は、誰も細かなミスなど気付かずに、全体の流れしか見ないからであろう。そういう目で見ると、確かにこの作品は分かりくい。エンドクレジットを除くと実質は僅か1時間35分しかなく、こんな短時間で映画化しようとしたことに、そもそも無理があるのだろうか? 公開当初、『ハリー・ポッターと賢者の石』は、流れがなく エピソードの羅列だと酷評されたが、ある意味では原作に忠実で、原作のファンにすれば映写時間の2時間32分は短く感じられたであろう。それに対し、こちらは1時間も短い。その上、原作を読んで気に入った人が見れば、かなり大胆な変更が加えられていて、時間が短い分、ますます混乱に拍車をかけている。脚本上のミスはほぼゼロなのだが、分かりにくければ評価は下がる。原作と設定を変えた理由は、恐らく、12歳の少年が、“身代金を稼ぐために妖精を誘拐する” という原作のストーリーは、ディズニーにとって看過し難かったからであろう。そのため、父を誘拐して アキュロスという原作には登場しない強力な武器を奪おうとする悪玉を登場させ、アルテミスは父を救うために戦う、と状況を変えた。身代金目当ての誘拐犯よりは、よほどカッコいい。しかし、そのため、アルテミスは、ダーク・ヒーローではなくなった。おまけに、原作の第1巻では、行方不明になって1年近く経つ父を登場させたため、アルテミスの “売り” だった天才度も低下。ダークでも天才でもないアルテミスは、ファンをがっかりさせたに違いない。そして、この大幅な変更にもかかわらず、大規模な戦闘シーンは、映画も原作と似たような形で展開する。しかし、細かな部分は、大筋が変更されたため、原作と違っている。アルテミスに次ぐ重要な “役どころ” の、若い女性の妖精ホリー〔わずか84歳〕には、原作には、犯罪者扱いされた高潔な父などいない。ホリーがアルテミスに捕まる理由も違う。捕まってからのアルテミスとの関係も違うし、魔法を使えない理由も違う。そして、戦争の結末も違い、終わってからのアルテミスとの関係も違う。ハリーとハーマイオニーの関係が全く違っていたら、読者にとっては不満だろうし、逆に、何がどうなっているのか混乱するばかりであろう。原作を知らない人が見れば、突然、いろいろなことが理由なく起こり、分かりにくいだろうし、2020年の映画にしては あまりに安手なCGに がっかりするに違いない。ただ、妖精ホリーを演じているララ・マクドネル(Lara McDonnell)は、アルテミスを演じているフェルディア・ショー(Ferdia Shaw)と同じアイルランド人で、撮影時の年齢も同じ14歳。すごく目が大きくて、妖精のように可愛い。ただ、原作では身長1メートル。なぜ、『ロード・オブ・ザ・リング』のホビットのように、ダブルキャストとカメラトリック、CGを駆使して “小さく” せず、人間と同じ大きさにしてしまったのだろう?

古代の遺物の合法的な収集だけでなく、違法な取引の陰に暗躍していると噂されているアルテミス・ファウル・シニアが、ある朝ヘリで出かけ、そのまま 行方不明になる。そして、かかってきた電話をアルテミス・ファウル・ジュニアが取ると、相手は父の誘拐犯だった。男か女か分からない声の持ち主は、ジュニアに対し、3日以内にアキュロスを探し出すよう命じる。「さもないと、父には二度と会えんぞ」。アキュロスのことなど聞いたこともないジュニアが、これまで父に仕えてきたバトラー〔執事〕に相談すると、彼は、これまでジュニアが存在すら知らなかった秘密の地下室へと連れて行く。シニアは、その秘密の場所で、バトラーに手伝わせて各種の遺物を収集・分類し、その結果を秘密の日誌に綴ってきた。ジュニアは、父が寝る前に詠んでくれた詩を思い出し、それが “アイルランドの祝福” という詩だと教えられると、書庫の中からその題名の本を取り出す。それは、題名とは違い 父の日誌だった。そして、その中に書いてあったことは、これまでのジュニアの常識を覆す内容だった。ジュニアが住んでいるアイルランドの地下深くには妖精の国があり、中で最もパワフルな妖精の一人オパールが、妖精界で最も強力な発明品アキュロスを盗んで悪用しようとしたのを、地底警察の偵察隊員ビーチウッドが死を賭して阻止し、アキュロスを父に託したのだ。ジュニアは、半信半疑ながら、アキュロスを見つけ出すため、妖精の力を借りようと考え、日誌に書いてあった、「ターラの丘にある樫の木に定期的にやって来る妖精」を捕まえることにする。そして、その罠にはまったのが、父ビーチウッドの死の手がかりを探しに来た娘のホリー。ホリーが人間に捕まったことは、妖精の国でも直ちに感知され、ホリーの所属する地底警察のルート指揮官自らが、大勢の隊員を引き連れて襲来し、ファウル邸をシールドで包み、内部の時間を凍結する。ジュニアは、ルートとの一対一での交渉の場で、アキュロスと、ホリーとの交換を提案するが、妖精の国にアキュロスはないので、交渉は決裂。打開策として、ルートは 収監中のトンネル掘り強盗のマルチを連れて来させ、減刑と交換に、地下から邸内に潜入し、ホリーを奪還するよう命じる。一方、ジュニアに捕獲されたホリーと、ホリーを捕獲したジュニアの間には、お互いの父親同士が友人だったと分かったことで、絆のようなもの生まれる。そのため、マルチが侵入し、目的から外れてシニアの強力な金庫に惹きつけられ、厳重な鍵を開けて中にアキュロスが入っているのを発見すると、2人でアキュロスを管理しようとする。一方、ファウル邸を囲んだ地底警察では、マルチの派遣が失敗に終わったことで、オパールに煽動された愚かなカジョン補佐官がルートから指揮権を奪い、巨大なトロールを邸内に撃ち込む。この戦いでバトラーは危うく命を落としそうになるが、トロールが落下死した後、ホリーがアキュロスで命を救う。妖精の地底警察は、時間凍結が崩壊したことで引き揚げ、ホリーはアキュロスを使ってオパールに捕らえられたアルテミスの父を救い出す。ホリーはアキュロスを妖精の国に持ち帰り、英雄として迎えられる。アルテミス父子と、仲間になったマルチ、それに、父の仇を取ろうとするホリーは、結託してオパールの成敗に向かう。

このシリースの唯一の主役にして、“悪の天才” でもあるアルテミス・ファウル二世を演じるのは、アイルランド生まれのフェルディア・ショー(Ferdia Shaw)。2004年6月29日生まれなので、2018年夏の撮影時には14歳。原作は12歳。この2歳の差はフェルディアには埋められなかった。映画出演歴ゼロのフェルディアを、なぜ、製作陣はキャスティングしたのだろう? 原作の面白さは、小さな子が 知恵を絞って妖精軍と戦うところにあったのに、高校生に近いような子が出てきたら、演技が上手でも興覚めだ。

あらすじ

映画の冒頭、主人公アルテミス・ファウルが住む館が映される(1枚目の写真)。写真の左下には、「ファウル邸、アイルランド」と入っている。この館はCGだが、白い崖は北アイルランドのPortrush(ポートラッシュ)にあるWhite Sandsと呼ばれる景勝地で、https://www.ireland.com/ に掲載されている写真を2枚目に示す。ロケ地はこの場所だが、館以外にも、背後の樹木などもCGで加えられている。このあと、館の入口の前にマスコミが押し寄せる場面が挿入される。その短くカットされた各報道機関の言葉で、アルテミス・ファウルの父親が、永年にわたる古代の遺物の盗難の首謀者だと疑われていることが分かる仕組みになっている。原作では、ファウル家は先祖代々「強請、密輸、強盗、企業犯罪」で富を築いてことになっていて(青字は、角川書店の『アルテミス・ファウル/妖精の身代金』からの引用)、より “悪質度” は高い。このマスコミ報道の中に、「124国際ニュース〔イスラエルのi24NEWSの捩り?〕」に続き、「JAPAN 24HR」という日本の架空の局のテロップが日本語で表示される(3枚目の写真)。フランス語もドイツ語も中国語もない。

この後、地元アイルランドのTV局が伝えるのが、アルテミス・ファウルの父の共犯者と思われる男が連行される様子(1枚目の写真)。この髭もじゃの男の名前はマルチ・ディガムズ。窃盗魔の巨大ドワーフ。原作によれば、窃盗魔というだけで普通のドワーフだが、映画では、小柄な俳優(身長168センチ)が選ばれているが、それでも大きいので、自ら 「giant dwarf」 と呼んでいる〔ギムリのように、特撮で体を小さく見せないようにしなくて済む〕。マルチは、この後、MI6の「赤い砦 尋問部隊」に連れて行かれ、非接触での尋問を受ける。マルチは 「俺はタダの穴掘りだ。あんたが知りたいのは作戦の親玉。アキュロスを盗んだ奴だろ?」言う(2枚目の写真)。手前の中央下部に見える黒いものが尋問官の頭。正面上部がマルチ。正面右上が海上に設けられた隔離施設。「アキュロスとは、想像を絶する 強力で神秘的な武器だ」。「嘘だ」。「いいか、俺の話を信じないだろうが、証明できるんだ」。そして、アルテミス・ファウルについて話し始める。原作とは全く違った出だしだが、これはこれで分かりやすい。

サーフィン用のウェットスーツを着たアルテミスが、館を出てから海岸沿いに進み、歩けなくなると、サーフボードを抱えて海に飛び込む(1枚目の写真)。そして、海面を快調に進む(2枚目の写真)。そのあと、サーフンで砂浜に到達すると、学校の制服に着替えて海岸沿いの小道を走り、崖近くに造られた学校(Saint Bartleby's School)に向かう(3枚目の写真)。ここでマルチの説明が入る。「彼は7歳で チェスのヨーロッパ・チャンピオンEvan Rashoggiを5手で破り、9歳で ダブリン・オペラハウスの設計コンペに勝ち、10歳で クローンの山羊を作った」というもの〔こうした “天才ぶり” は、原作には出てこないし、映画を観ていても、アルテミスの言動からは感じられない〕。そして、「尋常じゃないと、目立っちまう」の言葉に続き…

アルテミスが、学校のカウセラーのポー博士の面談を受ける場面につながる(1枚目の写真)。この場面は、原作の第1巻ではなく、第2巻の冒頭にある。映画では、博士が 「さて、アルテミス、少し話そうか」と言うと、アルテミスは、「いいですよ、先生」と言った後で、彼が座っている椅子を見る。博士は、「これは、ウチの家宝でな、祖父がサザビーズで落としたんだ。ウィリアム&メアリー様式。1689年から1702年の間だ、君も知っとるじゃろ」と自慢する。アルテミスは、軽蔑を込めて 「素晴らしいですね」と言う(2枚目の写真)。「かつて、バッキンガム宮殿で使われておった。女王のお気に入りだったに違いない」。アルテミスは、「宮殿に偽物は置かないでしょう。留め金を見てご覧なさい。頭に機械加工の十字模様が付けられています。早くても1890年代ですね。お祖父様は騙されたんです」と、如何にもプロの鑑定士のように言う(3枚目の写真)。原作では、アルテミスの方から、「先生のイスについて話しません? ヴィクトリア時代〔1837年~1901年〕ですか?」と持ちかける。その後の博士の言葉は映画と似ているが、ウィリアム云々と17世紀はない。それを聞いたアルテミスは 「宮殿に偽物は置きませんよ」と言った後、機械加工のことを指摘し 「早くても1920年です。お祖父様は騙されたんです。でも、それがどうしたと言うんです。イスはイスですよ」と慰める。言葉は似ていても、映画では、この後、博士は、アルテミスを非難して本物だと言い張り、アルテミスの言動の原因を “犯罪者だと疑われている父” に結び付け、アルテミスは怒って退席する。原作では、博士は、それに対して反論せず、話題を変える。「問題は君のその言動にある。君は、誰一人として尊敬に値するとは思っとらんようじゃからな」。この言葉に対し、「バカげてます。高く尊敬する人たちはちゃんといますよ」と反論し、アインシュタインとアルキメデスを例にあげる。これに似た言葉は、映画では、“宮殿に偽物” 云々の前に挟まれている。アルテミスに席を蹴って立たせるためだ。

そして、アルテミス・ファウル・シニア〔父、原作では一世〕が登場する。マルチの紹介は、「骨董品や稀少品、ありとあらゆるアイルランドのおとぎ話の収集家」。そして、「シニアはジュニア〔原作では二世〕に、レプラコーン〔アイルランドの民話・伝承に登場する小人妖精〕、バンシー〔髪の長い女性の妖精〕、スプライト〔羽根のある妖精〕、ゴブリンの存在を 教え込んだ」(1枚目の写真)。この辺りの設定が、原作では大きく異なっている。ファウル家は伝説的な犯罪一家だったが、その家運を一気に傾けたのはアルテミス・ファウル一世。ロシアで共産主義政権の崩壊〔1991年12月25日〕を機にロシア市場を開拓しようとして、ロシアマフィアに嫌われ、商品を満載した船とともに撃沈され、ファウル家は億万長者から転落し、それから1年近くが経過している〔原作の刊行は2001年だが、原作の舞台は1993年頃。一方、映画ではスマホが出て来るので現代〕。つまり、原作では、父は行方不明のままで一切登場しない。それに、アイルランドのおとぎ話のことを調べたのも父ではない。アルテミス・ファウル二世は、「2年前、インターネット上の検索で 人類からは隠れて暮らす妖精の存在と、めいめいの妖精が持っているブック(妖精の書)のことを知った」ことになっている。そして、ホーチミンに行き、そこにいた妖精の成れの果てから妖精の書を入手し、天才ぶりを発揮して妖精語の解読に成功する。そして、「この翻訳によって、新発見の生き物の一族から黄金を搾り取ることができる」と “お家の再興” を目指す。映画のアルテミス・ファウル・ジュニアは、妖精の存在はシニアから聞いていても、妖精語は知らないので、読むことはできない。そして、場面は、広い書斎の真ん中に座った父が、近い将来息子に見せようと “妖精のことを記した日誌” を書いている。そこにジュニアがやって来て(2枚目の写真)、「いつ発つの?」と尋ねる。「ヘリが前で待ってる。今すぐ発つが、できるだけ早く戻る。これからすることは とても大事なことだ。大変なことは知っているが、これで完結させたい」。「一緒に連れていって」(3枚目の写真)。「私には お前しかおらん。あとしばらく 安全な場所にいて欲しい」。こうして父は去って行った。

翌朝、アルテミスは、バトラーが電話口で怒鳴るように話している言葉で目が覚める。「何だと?」「そうだ、昨日、予定通り出発された」。緊迫した声にアルテミスは不安になる(1枚目の写真)。そして、階下にある電話室の様子を見る(2枚目の写真)。「どういう意味だ? 着いておられん? 船が無人?」「マニフェストを読んでおけ。じき、メディアに知れわたるぞ」(3枚目の写真)。そして、マルチによるバトラーの説明。「ドモフォイ・バトラー。友人、助言者、護衛。京都で武道訓練10年、モスクワで銃撃訓練7年、カリフォルニア州ヴェニス〔発祥の地〕のゴールドジムで筋トレ6年。名前は『バトラー』だが、誰一人、『執事(バトラー)』と呼ぶことは許されん。『ドム』か『ドモフォイ』だけだ」。原作では、アルテミスは 「執事(バトラー)」と呼び、バトラーはアルテミスを 「坊ちゃま」と呼ぶ。映画では、「執事」と呼び捨てることを、時代遅れで良くないと判断したのか?

マスコミは、ビッグ・ニュースにすぐ飛び付く。アルテミスが、パジャマ姿のまま広大なキッチンに入って行き〔映画でも。原作でもコックもメイドもいない。全部バトラーが一人でするのだろうか?〕、冷蔵庫からミルクを出してコップに注いでいると、TVのニュースが聞こえてくる。「当局は、本日、アルテミス・ファウル氏〔シニア〕の捜索を全世界的に行うと決定しました。公の場に姿を見せない企業家、論争の的になっている著名人のスーパーヨット、オウル・スター(Owl Star)号が、南シナ海で無人で漂流しているのが発見されたからです」(1枚目の写真)〔原作で、ロシアマフィアに撃沈されたのはファウル・スター(Fowl Star)号〕。「ファウル氏は、骨董品の収集家として知られていますが、ある筋によれば、過去10年間で最大級の盗難事件、大英博物館のロゼッタストーンや、ダブリンのトリニティ・カレッジにあるボルのハープ、ケルズの書などの盗難の背後にいるとの疑惑の持ち主です。オウル・スター号では、所有者が忽然と消えた以外、争いの形跡は一切ありませんでした」(2枚目の写真)「調査は目下進行中ですが、情報は何ら得られておらず、大きな疑問は残されたままです」。アルテミスは、「パパだ」と途方にくれ(3枚目の写真)、手に持っていたグラスを床に落とす。

その時、電話の鳴る音が聞こえる。アルテミスは 「パパ!」と叫んで走って行く。「もしもし、パパ?」。電話をかけた相手のいる場所が映る(1枚目の写真)。男のものとも、女のものとも言えない声が響く。「アルテミス・ジュニアだな。お前の父は預かった」。「何だって? 誰だ? 悪ふざけか? ホントなら、証拠を出せ」(2枚目の写真)。すると、父の声が聞こえる。「アルテミス。よく聞くんだ。この件には関わるな。いいな。お前には、助けられん。事が大き過ぎる」。その直後に、最初の声が 「お前の父は、私からある物を盗んで隠した。私自身で取り返しに行きたいが、敵が妨げている。だから、私に代わり、お前がアキュロスを探し出せ。さもないと、父には二度と会えんぞ」(3枚目の写真)。「アキュロスって何だ?」。「お前は賢い子だ。お前ならやれる。3日やる」。この “悪の権化” は、原作の2巻、4巻、6巻、8巻に登場する最大の悪役オパール・コボイ。4巻では『オパールの策略』と、題名にもなっている。しかし、1巻には全く登場しない。そして、アキュロスという強力無比の魔法の器具も、原作すべてに登場しない。

バトラーは、「アルテミス、相手は何と言いました? 一語一句そのまま話して下さい。男でしたか? 女でしたか?」と訊く。「分からない。ただ、アキュロスとかいう物を欲しがってた。何だろう?」。「アルテミス、着替えたら、一緒に来て下さい」。そして、廊下まで来ると、「これをご覧になるのは、初めてでしょう」と言い、床に棒を差して捻ると、廊下のフローリングが滑って行き、地下への階段が現われる(1枚目の写真)。「ここにお連れしたと分かったら、お父様に殺されるかも。でも、他に選択肢がないので、お見せするのです」。「ここは何なんだ?」。「お父様が、生涯をかけてこられた作業場です。お祖父様も、曾祖父様も」「この部屋にあるものは、格別の理由があって入手されたものばかりです。秘密を守るため、あるいは、悪の手に落ちるのを防ぐために」。アルテミス:「理解できないよ」。「お父様は、ゆくゆく、あなた様とこの秘密を分かち合う お積りでした」。「だけど、妖精なんか作り話で、真実なんてどこにもない」。この台詞を聞いた愛読者は、100%落胆したであろう。原作では妖精の存在を突きとめ、独力で妖精語を解読した天才アルテミスが、妖精を信じない?! 映画で、父親を登場させた代償は、あまりにも大きかった。地下室の大きなテーブルの上には様々なものが置いてあったが、アルテミスは、調べもせず、「アキュロスなんかどこにもないな」と断言する。バトラーは 「私、カタログ作りで何度もお手伝い致しましたが、その中にアキュロスはございませんでした。お父様は、発見した物は何でも私に情報を下さいましたが、日誌だけは秘密になさいました」と教える。「なら、それを探そう」。「私には見当もつきません。お父様は、何か手がかりを言われませんでしたか?」。その時、アルテミスは、父が寝る前にいつも詠んでくれた詩のことを思い出す。「行く手に道が開けますように。いつも追い風が吹きますように。陽光が顔を暖めてくれますように。野辺に優しく雨が降りますように。また会う日まで、友と共にありますように」(2枚目の写真)。「この詩の作者は?」。「アイルランドの祝福です」。アルテミスは、アルファベット順に並んだ引き出しの中から、「IRISH BLESSINGS〔アイルランドの祝福〕」を探す。そして、中に入っていた本を取り出す。それは、表紙と違い、中は父の日誌だった。記載された最後のページは、父がヘリで発つ前に書いていた文章だ(3枚目の写真)。「あの女は私の跡を追い、捕えたら殺そうとしている。あの女は、ビーチウッドが死んだ時、私にくれた物が何かを知っている。ここにアキュロスがあると奴らは知っている。アキュロスを悪の手に渡してはならない。アキュロスは(妖精の物だが)、妖精たちからも、護り通さねばならない」。アルテミスは、この時に至っても、妖精を信じるべきかを迷う。原作には、父の日誌はもちろん、アイルランドの祝福も存在しない。それにしても、アルテミスの優柔不断さには苛立たせられる。

そして、場面は、地底奥深くにあるとされる “ピープル” の世界に移行する〔人類は、“マッド・ピープル”〕。この世界の “姿” について、原作の第1巻には何も書かれていないので、1枚目の写真は、あくまで映画の製作陣による想像だ。私は、最初に観た時、海の底かと思ってしまったが、そうではなく、マグマの下にこうした空間があるらしい。この首都の名は、ヘイブン(Haven)・シティ。天国(heaven)から “e” が1文字抜けただけだ。通勤用の反重力飛行艇から降りてきたのは、ホリー・ショートというエルフ。『指輪物語』のエルフは人間より背が高いが、この世界のエルフは身長1メートル。ホリーが。LEP〔地底警察〕のレコン〔偵察隊〕の本部まで駅から歩いて行く途中で、マルチ・ディガムズと出会う。この映画は、マルチの回想の形をとっているので、このマルチも事件が起きる前の過去の姿だ。マルチは、何度目かの逮捕をされた後なので、手に電子錠がはめられている(2枚目の写真、矢印)。マルチの前後にいるのもドワーフ。こちらが平均的な身長なので、マルチが「ジャイアント・ドワーフ」と自称している理由がはっきりする〔マルチの前後にいるのは小人症の俳優さんたち。『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影では、こうした俳優さんと、サイズの異なるセットで撮った普通の俳優とを重ね合わせたりして、自由にサイズをコントロールしていた。やってはいけないことだが、たとえば、3枚目の写真のようにした方が、よりリアルだったかもしれない〕。この後、オパール・コボイがこの都市の牢獄を訪れ、カジョンという元LEPの補佐官に、「お前は、また補佐官になれる。すべての告発は取り下げられた。私が委員会を説得し、軍法会議で恩赦が与えられた」と告げ、「私に代わってLEPに潜入するのだ」と命じる。「スパイになれと?」。「スパイか死だ」。原作では、カジョンはLEPの回復隊の隊長。委員会メンバーになろうという下心からルート指揮官に反抗し、捕えられる。次の場面はルート指揮官の朝の訓辞。アキュロスが見つかるまで安全性は確保できないと危機感を述べ、全部隊を各方面への捜索に当てる(4枚目の写真)。訓辞が終わった後、ホリーは指揮官のところに駆け上がり、「父の手がかりをつかみました。父の最後の場所はターラの丘でした」と報告する。しかし、指揮官は、そこには行かせない。理由は、ホリーがまだ84歳で、未熟すぎるから(5枚目の写真)。原作では、ルート指揮官は男性。そして、レコン初の女性隊員であるホリーが嫌い。それに、ホリーに “重要人物” の父などいない。

次のシーンで人間界に戻る。海岸の絶壁の上に建つDunluce(ダンルース)城。屋根が落ち、石積みの壁しか残っていない廃墟だ〔冒頭のPortrushの5キロほど東〕。そこにバトラーが立っている。はっきり言って何の意味もない映像で、映画を分かりにくくしている。彼は何のためにそこに行ったのか? マルチは 「増援が必要」と、その動機を説明しているが、廃墟に増援などいるはずがない。結局、バトラーは、12歳の姪のジュリエットを連れてくる。ジュリエットはブラジリアン柔術ができ、バトラーと互角に剣術で戦うことができる(1枚目の写真)ようだが、12歳の少女が、「京都で武道訓練10年」のバトラーと対等に戦えるはずがない。原作でもジュリエットは登場するが、バトラーの妹で10台後半。戦闘能力はなく、一世の失踪以来 精神に異常をきたした妻〔映画では死んだことになっている〕の看病をしている。原作では足手まといになるになるだけの小さな存在だったが、映画では、もっと目立たないし、“戦闘能力” を発揮する場面はゼロ。ジュリエットは、サンドイッチを持ってアルテミスが作業をしている書斎に入って行き、「検索は大事だけど、根本的なこと忘れてるわ。食べることよ」と言って、皿を置く。「そんな時間はない」。「12時間ずっとじゃない」(2枚目の写真)。アルテミスは3台のディスプレイを見ているが、左右のディスプレイは、館の平面図と立面図だが、中央のディスプレイの左半分にある色の違う部分に映っているのは、妖精の本にあったアキュロスの絵。いったいどうやって見つけたのだろう? 「この家のどこにもないみたいだけど、あるはずなんだ」。「あきらめたわけじゃないでしょ?」。「もちろんさ。だけど、僕には無理なんだ」。「じゃあ、アキュロスを見つける人を呼んでこなくちゃ」。天才のはずのアルテミスは、ようやく思いつく。「妖精だ。助けてもらおう」。「助けてくれる?」。「説得がいるけど」。「どこにいるか知ってるの?」。「父の日誌には、ターラの丘にある樫の木に 定期的にやって来る妖精のことが書いてある。この娘(こ)しかない。妖精の世界は厳重に隠されてるし、あいつらの本は知らない言葉で書かれ、しかも暗号化されてるんだ」(3枚目の写真の左)。ここに描かれている “妖精の文字” は、原作の “Gnommish” と呼ばれる言語の文字とは違っている(映画のために創作された? 3枚目の写真の対応表はネット上で見つけたもの。これによれば、すぐ左の5文字は「of his」となる)。4枚目の右は、https://www.artemis-fowl.com/ という、原作に対する最も完成度の高いファンサイトに掲載された対比表(3枚目と全く違っている)。因みに、残念なことに日本語の訳本のp36-37に載っている「ピ-プルの書」の絵文字はすべてでたらめ。正しい文字は、先のサイトに表示されている4枚目の左の文字。実際に試してみたが、最初の一行は、ちゃんと 「the book of the people.」と読める。角川書店の訳本のp36-37にある文字は全くの別物。日本語に対応しているのかも?

その頃、ヘイブン・シティで、大問題が起きていた。巨大なピープルが地下の牢獄から、断層か休火山を通して地上に逃げ出したことが判明。このまま放置すれば、マッド・ピープルに隠して来た存在が知られてしまう。しかし、LEPの隊員は全員アキュロスの捜査でいなくなっている。そこで、残っていたホリーに命が下る(1枚目の写真)。ホリーは、地上に出られる最速の方法で送られる。統括技術者のケンタウロス、フォーリーは、「君は20万トンの溶岩の上に乗り、時速600マイル〔966キロ〕で上昇する」と ホリーに教え、飛行中は何があっても動くなと忠告する。そして、チタン製の卵形のポッドに固定されたホリーは、マグマの圧力で発射される(2枚目の写真)。発射後、カジョンは指揮官に、裏切り者のビーチウッド・ショートの娘を使ったことに抗議。「奴は、我が文明で最も貴重なアキュロスを盗んだ張本人ですぞ。そして、全ピープルを危険に曝した。あなたの監督下にある時に」。オパール・コボイによって補佐官に返り咲いたこのスパイは、事あるごとに指揮官の邪魔をする。原作では、ホリーは指揮官に嫌われていて、朝1分遅刻したことで、花の偵察隊から、最低の交通隊に左遷されかかり、「もう一度チャンスを」と懇願する。その時、トロールの逃走が伝えられ、出動命令を受ける。ポッドが火口から打ち出されると、ドアが開き、ホリーは機械式の羽根を動かして飛んでいく(3枚目の写真)。ホリーが飛び出したのはヴェスヴィオ山。右に延びているのはソレント半島。火山の山麓には有名な古代ローマの町ポンペイの遺跡がある。ホリーは、400キロ北西の町サン・ジョニャーノに直行し、フォーリーは時間を凍結し、トロールは無事排除される。因みに、サン・ジョニャーノといえば、フランコ・ゼフィレッリ監督の『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972)だろう。

ホリーは、任務完了後、決められたコースから逸脱する。ルート指揮官が 「何をしている?」と問うと、「父の汚名をそそぎます」との返事。ホリーは、アイルランドに向かう。距離にして1800キロ。東京から上海よりも遠い。よく叱られないものだ。原作では、ホリーが、トロールに対処している際、遮蔽の術が使えなかったことにルート指揮官が気付き、問い詰めた結果「魔法の儀式」による魔法力の補充を4年間さぼっていたことがばれ、故郷のアイルランドで儀式を行うよう命じられる。結果的にホリーがアイルランドに向かうのは同じだが、①映画の場合は、アイルランドに父の死んだターラの丘があるからだが、②原作の場合は、なぜアイルランドに行くのか全く分からない。原作者の故郷だからか?  この場合は、映画の方が明快だ。ディズニーが作っているからであろう。映画は、地下室で アルテミスが父の日誌を見ている姿を映し(1枚目の写真)、マルチの 「アルテミスは、真実を受け入れる準備ができているのか? 人間と妖精の双方を 暗黒が脅かしている真実を」の言葉が重なる。そして、ホリーが ターラの丘にある樫の木の下に到着(2枚目の写真、矢印の光る点)。すると、いきなり、顔に迷彩を施したアルテミスの姿が映り、横にいる、同じく迷彩服姿のバトラーに、「ドム、妖精だ。本物だ。父の言ったことはすべてホントだった」と話しかけ、麻酔銃でホリーを撃たせる。1発目がなぜ撃ち損じたのか分からないが、2発目は命中する。ここも、原作との違いが大きい。そもそも、①少し前の「父の日誌には、ターラの丘にある樫の木に 定期的にやって来る妖精のことが書いてある」の言葉の後、バトラーと樫の木まで行くシーンがあって、待ち伏せに行くのならいいが、1枚目の写真では、未だに日誌を見ている、②この期に及んで、「父の言ったことはすべてホントだった」では、アルテミスがバカみたい。③なぜ1発目を仕損じたのか? 原作に合わせるためだろうが、仕損じた理由が不明瞭、④その後、何も起きない。原作では、①アルテミスがバトラーに樫の大木の近くで張り込みを命じて4ヶ後にようやくホリーが現われる。②もともとアルテミスが2年にわたって調べてきたので、妖精の存在は確信している。③妖精は、「百万に一つの偶然」で、低く身を屈めてしまい、1発目を仕損じる〔普通なら百発百中〕。④アルテミスは、ホリーのヘルメットについていたビデオ・カメラを切断し、レーダーの付いたリストバンドを港にした日本の捕鯨船に入れて捜索を妨害する。ヘイブン・シティでは、フォーリーが、ルート指揮官に、ホリーからの電波が消えたと報告する。「最後の座標は?」。「ちょうどターラの丘に着いたところでした。近くに居住する人間は一人だけ…」。ルートは、如何にもよく知っているように 「ファウル邸」と言う。「ご存じで?」。「全職員に緊急警報」。原作では、1発目を仕損じた後、ホリーはバトラーに捕まり、アルテミスと話を交わす。その中で、a)アルテミスが妖精の存在を事実として知っている、b)妖精は樫の大木で「魔法の儀式」を行う必要があると知っている、c)魔法力のない妖精でも催眠術だけはできるので 反射眼鏡をかけている、ことをホリーは知るが、ホリーのヘルメットのビデオ・カメラを通じて、ルート指揮官もそれを知り、妖精の特性を熟知したマッド・ピープルの存在を知り、危機感をつのらせ、500年ぶりに現場の陣頭指揮を取ることにする。また、アルテミスの罠にはまり、日本の捕鯨船を追跡する〔映画と違い、アルテミス・ファウルのことは全く知らない〕。原作で一番に気に入らない部分は、この捕鯨船に対する記述。❶船体に鉛を多用(100%間違い) ❷捕鯨の目的は鯨油(欧米において、過去に行われた捕鯨の重要かつ最大の目的は、食用としての鯨肉確保ではなく、鯨肉から採れる鯨油の採取)と、反捕鯨の立場から、全くの嘘が書かれている。小学校教師として14年間勤務しながら1998年に作家デビューした人間が、自分の無知からこうした悪口を言いふらすことは、2500万部のシリーズだけに許しがたい。反捕鯨が言いたいのなら、アイルランドも捕鯨国なのだから、船籍を日本ではなく アイルランドにすべきではないか。

アルテミスは、昔、父と交わした問答のことを思い出す(1枚目の写真)。父:「相手の目を見る時はどうする?」。「見ない。妖精は念力や催眠術に秀でているから」。「その通り。で、対処法は?」(2枚目の写真)。「コントロールされないよう、ミラーコーティングされた眼鏡をかける」。「よし」。これでは、父が天才で、アルテミスはただの弟子。ファンが怒るのは当然だ。次のシーンでは、反射眼鏡をかけたジュリエットが、“寄せ集めの木材で作った牢” に閉じ込めたホリーに食事を持って行く。ホリーは、麻酔銃で撃たれて運び込まれたので、自分がどこにいるのか分からない。そこで、「ここはどこ?」と訊く。それを聞いたジュリエットは、「すごい、英語が話せるのね」と驚く。原作は、アイルランドの作家で、出て来る妖精の中にアイルランドの伝説のものもあり、英語を話すのは当然の雰囲気。それでも、ジュリエットの言葉は、「英語が話せるのね。それはどこの訛り?」。映画では、妖精がアイルランドの地下にいるわけではないので、すらすらと英語を話すのは、ディズニーだからと納得するしかない。ホリーは、ジュリエットに催眠術をかけようとするが、その時、牢のある部屋に入って来たアルテミスは、「僕たちは、防護されてるぞ」と言って、眼鏡を指す(3枚目の写真)。

ホリーは、怒鳴るように、「あんた、誰? 何のつもり?」と訊く。「君は、計画の一部だ」(1枚目の写真)。「ここのボスは?」。「僕だ」。「子供じゃないの」。「ファウル邸にようこそ、ショート士官」。「どうして名前を知ってるの?」。「ヘルメットに書いてある」。「でも、Gnomishよ」。「そうさ。僕は、君をこの館に正式にご招待する」(2枚目の写真)〔このさりげない会話は、脚本の唯一の間違い箇所。アルテミスは、原作と違ってGnomishの解読ができていない。どうやってホリーだと分かったのだろう??〕。「ご招待? 私を撃ったくせに」。「これからは、僕の言う通りにしてもらう」。「私を、ずっとここに閉じ込めるつもりなの?」。「君が、そうしたいなら」。「罰せられないですむと思ったら大間違いよ。仲間が助けに来るわ」(3枚目の写真)。「そこが狙い目なのさ」。この部分の冒頭は、原作と似ている。だから、脚本がコケたのかも。アルテミスは、「ホリー・ショート大尉」とフル・ネームで呼びかける。「どうして知ってるの、私の…」。「名前を? 階級を?」。「でも、言葉が…」。「妖精の言葉で書かれている。確かに。僕は妖精語に堪能でね」。ここからは、原作は映画と乖離する。「で、どういう計画なの? 当てさせて、世界支配?」。「ただ、金持ちになりたいだけさ。僕は、妖精から黄金を奪う最初の人間になるのさ」。そして、ホリーを誘拐したのは身代金目的だと話す。これでは、ディズニー映画に相応しくない。

ルート指揮官は、時間停止装置を発進させ、装置はファウル邸の真上に到達すると バリアを張り始める(1枚目の写真)。そして、バリア内の時間が停止されると、ルートを先頭にLEPの大隊が浜辺に集結する(2枚目の写真)。原作では、執筆が2001年と20年前のためドローンがまだなかった時代なので、ファウル邸の周りをパラボラアンテナで囲んで時間を止める。停止時間は8時間。その間、外部では時間が停止し、バリア内でのみ時間が正常に進む。だから、バリア内の妖精部隊も自由に行動できる。ここで、カジョンがルートと警察学校の同期生だと判明する。そして、このスパイは、生物爆弾〔中性子爆弾を、生物のみの抹消に特化させたもの〕の使用を主張する。ルートは使用を拒否し、10名ほどの部隊を遮蔽〔透明化〕した上で偵察に行かせる。映画では、生物爆弾は一切登場しない。ルートは、7名の部隊を偵察に出す〔透明化されてはいない〕。その前に立ちはだかったのは、黒い背広を着たアルテミスとバトラー(3枚目の写真)。『メン・イン・ブラック』のノリだ。2人は、ホリーから奪った武器で戦う。途中で、アルテミスが、バトラーに、「時間凍結カプセルを撃て」と命じると、いつの間にかバトラーの手に魔法の弓矢があり〔どこにあったのだろう? ホリーの銃が矢に変わったのだろうか? 何の説明もないので非常に不自然〕、バトラーはカプセルに向かって矢を放つ。矢が当たってもカプセルは破壊されなかったか、極度に不安定化する。アルテミスは、落ちていた妖精のヘルメットに向かい〔ルートに連絡できる〕、「誰か交渉に寄こせ。5分やる」と言う。原作では、この戦闘に出向くにはバトラーだけ。行く前に、アルテミスは 「死ぬほど怖がらせてやれ」と指示する。そこで、遮蔽されていても彼には見えるのに、見えないフリをして隊員の中に入って行くと、突然、「今晩は、皆さん」と声をかけ仰天させ、伍長を残して全員片付ける。そして、伍長に、交渉者の派遣を命じる。

ルート指揮官は館の玄関まで行く。ドアが開き、アルテミスが 「わが館にようこそ」と招じ入れる(1枚目の写真)。このシーン自体は原作にもある。ただし、もっと複雑。ルートは、最初外での交渉を望むが、アルテミスは、外に誘(おび)き出して誘拐するための小細工だと一蹴。「どこで会談を行いたいんだ」。「もちろん、中さ。ショート大尉の命は君の行動次第であることを忘れないよう気を付けたまえ」。映画のアルテミスより強権的だ。そして、1対1の交渉が始まる(2枚目の写真)。「ここの責任者は?」。「僕だ」。「たった10歳で?」。「12だ。あんたは?」。「知りたいのなら、この5月で803」。そして、ルートは 「ショート士官を即刻解放しない限り、この館と中のものすべてを破壊する」と脅す。アルテミス:「その時は、君たちの存在を暴露する」。「できない。時間を止めてある。外には出られない」。「だが、27分しか持たない。指揮官、僕の要求はこうだ。アキュロスを渡したまえ。ショート士官は解放する」。「警告しておく。我々は身代金など払わん」。「考え直すんだな。15分やる。館を攻撃するつもりのようだが、僕が生きてる限り、一人の妖精も中には入れない」(3枚目の写真)。ここで、ルートが「身代金」という言葉を使ったことで、何とか、映画の邦題の言い訳が立った。原作では、アルテミスは、「僕は、君のような生き物が地下に住んでいることを公表する手段を持っているが、君たちには僕を止める力がない」「時間が停止してる間は、やらんよ」「タイムリミットは8時間。時間切れが迫り。問題が解決できないとなると、時間を止めた場所に限定して生物爆弾が使われる」。アルテミスはすべてを知っていて、それをさらけ出す。その上で、「純金千キロ。印のない小さな金塊のみ」と要求する。指揮官が皆殺しを示唆すると、「時間を止められている場所から脱出する方法を知っているから」と告げる。そして、最後に投げかける言葉が、「僕が生きている限り、君たち妖精は誰一人としてここに入れない」だ。原作では、明らかな身代金要求になっている。金の価格は現在1グラム約6600円。千キロで66億円。“お家の再興” を目指した割には少ない。何故かというと、億万長者からの復帰を目指すのに、ドル換算では66億円は1億ドルに足らないからだ。ポンドならもっと少なくなる。もう一つ、映画にも出てくる台詞がある。「僕が生きてる限り」だ。原作では、この台詞は、「アルテミスを殺せばいい。そのために生物爆弾を使おう」という意思決定を促すため、アルテミスがワザと発言したもの。しかし、映画では、あとで使われるが、台詞には何の意味もない。原作との類似性を高めるため、意味もなく入れただけだ。

アルテミスは、ホリーに会いに行く。「君のボスに会ってきたぞ。僕の言わんとすることは伝わったと思う」。ホリーは、「どうなればいいと思ってるの?」と、ズケズケ訊く。「僕の望みが叶う」。「もっと正確に」。「父が無事に戻ること」。「そんなの、私と、何の関係があるの?」(1枚目の写真)「何かのゲームとでも?」。「ゲーム? 父は誘拐されたんだぞ」。「私の父さんは死んだ」。「君を信じてもいいか?」〔これは 突然の言葉で、“ホリーの父の死” とは無関係〕。「信じなさい。それしか途はないわ」。その言葉で、アルテミスは反射眼鏡を外す(2枚目の写真)。「なぜ亡くなった?」。「ターラの丘で 仲間の待ち伏せに遭った。アキュロスと呼ばれる物を盗んだから」。「父の日誌でアキュロスのことは読んだ。アキュロスを守ろうと誓ったビーチウットという妖精のことも」〔犯罪者扱いされているビーチウッドが 「守ろうと誓った」高邁な妖精だと、遺物を収集しただけでなぜ分かったのか??〕。「ビーチウット・ショートは父さんよ。アキュロスが如何に危険か知ってた。アキュロスは 異なる世界への入口を開くことができるの。全宇宙への合鍵ね。だから隠して、犯罪者扱いされた」。「僕の父も犯罪者扱いされてる」。「でも、そうじゃないと知ってる」(3枚目の写真)。これで、2人の間には共通認識が生まれる〔2人は “強い絆” で結ばれる〕原作では、ホリーは、アルテミスのことを金目当ての誘拐犯としか見ていないので、映画のように “強い絆” で結ばれる同盟者には決してならない〔ここは、映画の方が好き〕

ルート指揮官は、事態を打開するため、ヘイブン・シティの牢獄の雑居房に入れられていたマルチ・ディガムズを急遽呼び寄せる〔妖精は、時間の停止した場所に自由で出入りできる〕。ルートは、「マルチ、超特例の恩赦よ。穴を掘ってファウル邸に潜り込み ショート士官を救い出したら、刑期から50年差し引いてあげる」と申し出る(1枚目の写真、矢印は電子錠)。マルチはあれこれ交渉し、「独房に変え、74年分の減刑」で手を打つ〔原作では、マルチの受けた命令は、「ファウルが、なぜ我々のことを何でも知ってるかを探り出し、それを破壊すること。ショート大尉の救出は二の次。減刑はほぼ同じ〕。そして、館に続く階段の前まで行くと、口を大きくあけて穴を掘り始め(2枚目の写真、矢印は巨大な口から飲み込まれ、いち早く排出された土)。マルチは、館の中の「肖像画の陳列室」と呼ばれる場所に姿を現す(3枚目の写真)〔原作では、もっと地面に近いワインの貯蔵庫〕

バトラーから、①陳列室に侵入者があり、②それが巨大なドワーフだ と知らせを受けたアルテミスは、「予定通りだ」と言い、マルチの行動を放置する。マルチは、陳列室の中に隠し金庫の存在を感じると、命令そっちのけで解錠に取り組む(1枚目の写真)。アルテミスはホリーに会いに行くと、「ドワーフが送り込まれた。助けが要る」と言い、ホリーを外に出す(2枚目の写真)。アルテミスは、念のため 「万一逃げたら、世界中に君の存在を言いふらす」と言う。信頼の欠如に怒ったホリーは、「私を信頼できる、と思ってる〔you think you can trust me〕?」と訊き、アルテミスが黙っていると、突然顔を殴り、「これで、信頼できる〔Now you can trust me〕」と言う。何度見ても分からないシーンだ。台詞が、「私を信頼できないと思ってるわけ?」「ちゃんと信頼しなさいよ」だったら、まだ意味が通るのだが。因みに、この “殴る” シーンは、無理矢理に原作から取り込まれたものだ。状況は全く違う。①ホリーは、樫の大木の下で拾ったドングリを1個こっそり持ってきていた。②ホリーは、牢のコンクリートの床に寝台を何度もぶつけてヒビを入れ、そこにドングリを入れ、魔法力を回復する。③マルチが金庫を開けた時、ホリーは魔法で目の前に現れる。④マルチは目的を果たしたので逃げる。⑤ホリーと出会ったアルテミスは、これまでのように命令しようとするが、状況が変わったホリーは、これまでの恨みを晴らそうと、まず一発殴る。こうした状況ならば、非暴力主義の妖精が自分より大きなピープルを殴ることは理解できる。2人は、ドワーフの状況を調べに行く。マルチは、自分のあごの毛を使って特殊な金庫を開けると、中にはアキュロスが入っていた〔原作では、妖精の書のコピーが入っていて、なぜアルテミスが妖精界に詳しいかが ルート指揮官に分かる〕。マルチに与えられた任務はホリーの救出なので、そこにホリーがアルテミスと一緒に現われ、「下がって、ディガムズさん」と命じると、素直に場所を替わる(3枚目の写真)。

アキュロスが発見されたことを知ったオパール・コボイは、カジョン補佐官に、「我が新しき帝国で お前が成功したいのなら、今すぐ指揮権を奪え」と命令する。同じ頃、時間の凍結がさらに不安定化する。カジョンはルートの前まで行くと、「ルート指揮官、委員会の委任を受け、貴官の指揮権を剥奪する」と言う〔原作では、カジョン補佐官が個人的に暗躍して委員会を説得した結果だが、映画では、オパールの命令の直後なので、委員会工作の時間などあったとは思えない。そして、巨大なトロールが飛行艇で運ばれてくる〔原作では、カジョンが用意万端整えて連れてくるが、映画では突然なので、意表を突かれる〔まさか、としか思えない〕。カジョンの描写は、映画でも最悪の部分で、彼は何をどんな風に準備したのか、さっぱり分からない。トロールの唸り声を聞いたホリー、マルチ、アルテミス、バトラーは、アルテミスの部屋に駆け付ける(1枚目の写真)。「あれは何だ?」。「人間は2.97秒、妖精なら1秒で食べちゃう怪物よ」〔原作では、マルチはもういないし、ホリーは単独行動〕。4人がいる窓の外には、飛行艇が浮いていて、そこには、トロールが頭を先にして乗せられている(2枚目の写真)。4人は、トロールが突入する1階まで駆け下りる。妖精銃を構えて空中で待ち受けるホリーに、アルテミスは、「何か用心することは?」と尋ねる。「歯よ」。「それは素敵だ」(3枚目の写真)〔アルテミスが見せる初めての “自信のない表情”〕

トロールは、玄関から館内に撃ち込まれる(1枚目の写真)。トロールは4人の脇を通過して、そのまま中央の壁を突き抜け、暖炉の反対側に落ちて止まる。その勢いで、アルテミスは床に倒されて悲鳴を上げ(2枚目の写真)、ホリーは、高い天井の上まで吹き飛ばされ、照明器具に背中の羽根の駆動装置が挟まって動けなくなる。ホリーが落とした妖精銃はアルテミスが拾い、アルテミスが落としたアキュロスは、マルチが拾い、紛失しないよう、口を大きく開けて胃の中に隠す(3枚目の写真)〔大きな口は、この映画のCGで唯一面白いアイディアだが、顔の皮膚の処理が下手で嘘っぽい〕

アルテミスは、ホリーを助けようと、2階の自室から照明器具に向かってジャンプ(1枚目の写真、矢印は “挟まった” 駆動装置)。そして、ホリーのそばに寄って行き(2枚目の写真)、何とか外そうとするができない(3枚目の写真)。結局、トロールが照明器具に飛びかかり、その衝撃で、ホリーは抜け出すことができた。一方、階段に飛び降りたアルテミスは、ホリーの妖精銃で 照明器具にぶら下がったトロールを撃つが なかなか当たらない。

逆さ吊りになったトロールが暴れるので、照明器具を天井に固定する部分がどんどん弱体化されていく。そして、アルテミスがその真下に。それに気付いたバトラーは 「アルテミス!」と叫ぶと、“落下するトロール” に凍り付いたアルテミス(1枚目の写真)を、突き飛ばし(2枚目の写真)、自ら犠牲になって、トロールの下敷きになる(3枚目の写真)。アルテミスは、瀕死のバトラーを何とか引きずり出し、ホリーが羽根をフルに使って破壊を免れた部屋まで運ぶ。館の外では、時間の凍結が崩壊を始め、LEPの隊員が空中のどこかに引きずり込まれて消えていく。

アルテミスは、ホリーに、「彼を助けて」と頼むが、「できない。私の魔法力は封じられてる」と言われてしまう〔少し前のシーンで、カジョンは 「館内の魔法力を無効にしろ」と部下に命じている。その理由は、「かつて、あいつの父親は俺に対して魔法力を使った。二度と同じ過ちを犯したくない」という漠然としたもの〕。アルテミスは、バトラーに向かって 「頑張れ、相棒」と声をかける(1枚目の写真)。バトラーは 「剣道では、“斬り殺し” と呼びます。致命的な一撃です」と、瀕死の傷を説明する(2枚目の写真)。「すべてのバトラーがお前を誇りに思うだろう」〔原作では、「バトラーたちは、何世紀にもわたってファウル家に仕えてきた」とあるので、読者には理解できるが、そうでなければ この言葉は理解できない〕「さよなら、我が友よ」。息を引き取りかけたバトラーに向かって、アルテミスはアイルランドの祝福を詠む。「行く手に道が開けますように。いつも追い風が吹きますように。陽光が顔を暖めてくれますように。野辺に優しく雨が降りますように。また会う日まで、友と共にありますように」(3枚目の写真)。

この時、館の外では、作戦が失敗に終わったカジョンに対し、部下から、ホリーの安全のため、魔法力の無効化を止めるよう要求が出される。カジョンが拒否すると、部下が逆らって解除命令を出す〔これ以後、失脚したカジョンは登場しない〕。魔法が使えるようになったホリーは、死の直前のバトラーを回復させる(1枚目の写真)。トロールが襲ってきた後のシーンは、原作と比べると、映画の方が 動きがあって面白い。原作では、狭い空間の中で、バトラーが死に至る重傷を負い、次にジュリエットが殺されかけた時、ホリーが情けをかけてバトラーを救う。そして、救われたバトラーがトロールと一対一で戦って殺す。その間、アルテミスは何もできない。時間の凍結が完全に崩れると、空では大混乱が起きる(2枚目の写真)。館のテラスに立ったアルテミスは、マルチに、「アキュロスは、まだ持ってるか?」と訊き、マルチはお腹を見せて 「ここにある」と言う(3枚目の写真、矢印)。空では、LEPの隊員の必死の避難が進む。終盤の展開は、映画と原作とでは全く異なる。原作では、館内の全生命の抹消を目的に生物爆弾が使用される。しかし、アルテミスは、全員に睡眠薬を飲ませることで、時間停止地帯から脱出し、爆弾の影響を受けずに〔爆発した時、その時点にいないことで〕生き残る。

妖精たちがいなくなるのを見たアルテミスは、アキュロスを手に持ち 「時間の凍結は終わった。奴らは行った」とバトラーに言う。「勝ったので?」。「まだだ。これをオパール・コボイには渡せない」。そこに、自発的に館に残ったホリーが現われる。「遅かったな」。「いいこと、私は ありとあらゆる掟を破ってるのよ」。「破るのが好きなんだ」(1枚目の写真)。「よく言うわ」。「取引しよう。アキュロスで父を助ける」〔助けた後、アキュロスはホリーに返す〕。「あんたを信じていいわけ? どうやったら、あんたを信じられる?」。「父がいつも言ってた。『真の友は、真実を語る〔これは、アイルランドの格言「Is maith an scáthán súil charad」〕』」(2枚目の写真)。「私たち 友だちなの、アルテミス?」。「そうさ。永遠の友だ」。そう言うと、アルテミスは手を差し出す。ホリーはその手を握る。一方、オパール・コボイは、3日という期限が過ぎたためなのか〔説明不足〕、アルテミスの父の命を取ろうとする。同じ頃、ホリーは、アキュロスを手にして話しかける〔ホリーは 「これが、どんな風に機能するかしら知らない」と 正直に言った上で、始める〕。すると、アキュロスから黄色い光の帯が流れ出し、取り囲むように座っているアルテミス、バトラー、ジュリエットのところまで拡がっていく(3枚目の写真)。そして、アキュロスから強烈な衝撃波が出ると、光が消える。「うまくいったの?」。「分からない」。

アルテミスは、父が戻ってきたと信じ、館の中を捜し回る(1枚目の写真)。父は、アキュロスの光に包まれ、地下室に出現する。2人は固く抱き合う。「どうやった? どうやって私を助けた?」。「日誌に従っただけだよ。友だちの力もちょっと借りたけど」(2枚目の写真)〔「ちょっと」と言うのは、ホリーに失礼〕。父は、ホリーがビーチウッドの娘だと知らされると、「君のお父さんは偉大な方で、良き友だった。私にアキュロスを託された。君たちの世界の身勝手な連中に利用されないようにするために」。「じゃあ、父さんは アキュロスを護ろうとしたんですね」。「そうなんだ。命を賭してね。君のお父さんは英雄だ。君のように」。そう讃えると、父は、オパールの仲間の名を書いたリスト〔ビーチウッドが書いた〕を渡す。ホリーは、アキュロスとリストの両方をヘイブン・シティに持ち帰ったことで、ルート指揮官から全面的に信頼され、優秀な隊員として、リストの異端者の捜査を命じられる。そして、LEPレコンのメンバーから敬礼で迎えられる(3枚目の写真)。

窓辺に立ったアルテミスと父。「これは、お前のものだ。戻す前に洗うのを忘れるな?」と言って鍵を渡す(1枚目の写真、矢印は鍵)〔“一事が万事” の証拠で示した写真。脚本家は何を考えているのだろう? これまで鍵など一度も出てこなかった。何の鍵?〕。「これからどこに行くの?」。「すべてを終わらせる」。「僕も一緒だよね?」。「もちろんだとも」。「じゃあ、まず 電話をかけないと」。そう言うと、アルテミスは、何故か反射眼鏡をかける。そして、1人でベランダに出ると、オパール・コボイに電話する。「オパール、失敗したな。お前は 父に間違ったことをした。ビーチウッドにも、他のすべてにも。だから、お前を捕まえに行く」。「私を倒せると思っているのか? 何様のつもりだ?」。「僕は、アルテミス・ファウル、犯罪の黒幕だ」(2枚目の写真)〔原作ではそうだが、映画のアルテミスにそんな一面はこれまでなかった〕。アルテミスは、館の前にいるヘリに乗り込む(3枚目の写真)。

マルチ・ディガムズが 話し終わった時、MI6の尋問官は、お伽話を聞かされたとしか思っていない。そんな相手に向かい、マルチは 「彼ら〔ファウル・シニアとジュニア〕は平和を守っている。そのことは忘れるな。だから、アルテミスは俺を逮捕させた。お前たちに、俺の存在を信じさせるために」と言うと、口を大きく開けてお腹から小さな装置を取り出す。「追跡装置だ」〔秘密の尋問場所を、アルテミスに知らせるため〕。その時、天窓が破れ、縄バシゴが落ちてくる。マルチは、「おさらばだ!」と叫ぶと、縄バシゴにつかまって上昇していく(1枚目の写真、中央の矢印は縄バシゴのマルチ、右の矢印はファウルのヘリ)。マルチは、そのままヘリに乗り込む。アルテミス:「まだ、やり残した仕事がある」。マルチ:「仕事は大好きだ」(2枚目の写真)。ホリーが仲間に加わると(3枚目の写真)、一行はオパール・コボイ退治に出発する。

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